画家・野又穣氏のファンは多いことだろう。
過去か未来か、どこの国が舞台なのか。キャンバスの中に建築を建てる画家である。
先日、野又穣氏のトークショーに足を運んだ。氏は大変な音楽好きだそうで、絵画のイメージも音楽から得ることが多いということである。今回のトークショーは、野又氏本人がいくつもの楽曲をかけながらDJの様に語りが進んでゆくという大変ユニークなものであった。
震災の後、野又氏は筆が止まったという。何ヶ月か仕事場に行かなかったそうだ。
そして震災からそろそろ1年というタイミングの今回の展示では、「BLUE CONSTRUCTION」と名付けられたシリーズが発表されていた。それらの作品は、今までの作品よりもより憂いを帯び、また余計なものを削ぎ落とし、本質に迫ってゆくような静かな迫力のあるものであった。(野又氏の描く煙突や鉄骨フレーム、風車などのアイテムが好きな人には、少々物足りなく思えるかもしれない。)
トークの中で野又氏は、「悲しい時は、悲しい歌を歌えばいい」のだ、言った。
そして、徹底して悲しみを歌う幾つかの音楽を紹介してくれた。
今回の「BLUE CONSTRUCTION」シリーズは、文字通りに我々の「BLUE」な心を表している。震災以後の我々の悲しみを、気張らずに、無理せずに、「悲しい時の悲しい歌」を奏でているのである。
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