強風

打ち合わせを終えて外に出ると、強風にやられ、一瞬のうちに傘が壊れた。

安物のボロ傘とはいえ、あまりにあっけない結末だった。

「夕方から台風並みに天気が荒れる」と予報で聞いていながら「まあ大丈夫だろう」と高をくくり、さほど焦らずに小田急線に乗ったが、藤沢に到着すると東海道線は何時間も前から強風のため運転の見合わせしていた。辻堂、茅ヶ崎とあと2駅なのに、突然の足止めである。思いがけなく、ちょっとした帰宅難民風の時間を過ごすことになった。

振替バスの天文学的行列にはどうしても並ぶ気がせず、夕飯をすませ、コーヒーを飲む。ああ今日は小説を持っていてよかった。電車が動きだすまで、コーヒーでねばり、小説を読もう。気が向いたらエスキースでもしよう。これはこれでいいかと、帰宅難民ライフを充実させる作戦に入った。某ファーストフード店には似たような人々がいて、不思議な一体感がある。あせったり、もがいたりしても、天気、自然には我々はかなわない。1年前に強烈な一撃を我々日本人は食らってるから、皆その分、対処が落ち着いてきている。帰宅難民の経験値が上がっているのである。

幸い3時間ほどのコーヒータイムで交通機関は回復し、無事に家に帰ることができた。強い風はまだ残っていたから、駅からは髪や上着をあおられながらの歩行である。つくづく自然の破壊力を見せつけられ、人はその分際を知るこの頃である。

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