氷を彫刻するマスター

少し前のこと。

連休中のことなのですが、千駄ヶ谷で飲みました。

「リカリスイ」という大きな看板を掲げた店で、小さな古い一軒家に4件のバーが高密度に同居しているという「シネコン(シネマ・コンプレックス)」ならぬ、夢の「飲みコン(飲み屋コンプレックス)」なのでした。

その佇まいは、横尾忠則の「Y字路」シリーズのごとく道を左右に切り裂き、二股に別れた道の向こうへと時間軸がねじれてゆく。この場所で、あらゆる要素をねじれさせてゆく、見事なオーラをまとっているのです。

4軒の店はどれもスバラシイのですが、その中の1軒、道に面した黒いバーがあります。夜もかなり更けた時間に、店の前に大きなバイクが横付けされました。マスターの登場です。開店と同時に席につき、僕らはバーボンのロックを注文。カウンターの向こう、厨房内には、ウッドベースが置いてある。マスターはロカビリーをやるらしい。なるほど、髪型はリーゼントだ。そしてマスターがおもむろに取り出したのは、大きな板氷。それを大きな中華包丁で割り、削り始める。あっという間に、球形の氷を削り出した。球形の氷は、僕のグラスのお酒に合う形、隣のバーボンロックには四角い氷、それぞれのグラスにぴったりなカタチを削り出して、酒を注いでゆく。そうなると当然、お酒は格段と美味しくなるわけです。

 

いい仕事をみたなぁ。

忘れないうちに、一筆。

 

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