少し上の空を見て〜サンチャイルドと大仏

東京・夢の島の第五福竜丸展示館前に、ヤノベケンジ作の「サンチャイルド」が出現している(〜7/1まで)。この作品は、3.11震災後にヤノベ氏が制作した巨大彫刻(高さ約6M)である。

ヤノベ氏の作品のトレードマークともいえる黄色いアトムスーツを着た少年「サンチャイルド」は、ヘルメットをとって、少し上の空を見つめている。放射能を防御していたヘルメットを脱ぎ捨てることで、放射能が在る世界との決別を決意しているようにも見える。頬には絆創膏が貼られ、顔は傷だらけである。とにかく大きく澄んだ黒目は、少し上の空を見つめながら、立ち上がり、負けずに進んでゆこうとしている。瓦礫の中からすくっと立ち上がった少年、あるいは「立ち上がる心」が描写されていると感じる。

サンチャイルドの制作風景の映像を観たが、私はそこに「大仏」を感じた。ヤノベ氏の指揮のもとに、美大生?を中心に、多くの人々の手によってじっくりと綿密に作り込まれた巨大「人型(ひとがた)」彫刻は、仏像となんら変わりはない。素材にスチロールやFRPを使おうとも、ある種の祈りを込めた巨大な人型の物体は、大仏と等しい。

斜に構えた批判や客観によるアートは、被災の当事者では成し得ない。

切迫した状態で立ち上がるアートからは、「ひねり」の要素が無くなるのだろう。

このあまりにもシンプルな心とカタチの関係は、僕らに根源を提示している。

それは、心とカタチの間の贅肉を削ぎ落としたものといえるのだろう。

 

 

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