左官・榎本新吉さんのこと。

左官・榎本新吉さんが亡くなった。。

手ぬぐいを頭にまいた凛々しい写真が花の中に飾られていた。

 

私は、吉祥寺のライブハウス、スターパインズカフェの仕事の時に、榎本新吉さんに随分お世話になった。店内の生石灰クリームの塗り壁を自力で施工するために、その方法を榎本さんに教わったのである。「ってやんでぃ」という勢いにのって繰り出される言葉といたずらっぽい表情は、刺激に満ち満ちていて、多くの榎本新吉ファンが存在している。

 

「俺の仕事を、地球に優しい仕事とかなんとか、若い奴らが呼び始めやがったよ」

「伝統と伝承は違うんだよ。革新なくしては伝統とはならない。伝統は時代への挑戦である。」

 

榎本新吉さんが残した言葉である。

 

 仙石の仕事場にお邪魔したときは、いつも新しい手法を研究していて、それを私たちに教えてくれた。いつも革新への志向に満ち満ちていた。我々を叱りながら、目はとても優しく、思わず微笑んでしまう可愛らしさを持っていた。

 

新吉さんに教えてもらった生石灰クリームの塗り壁は、色彩抽象絵画のようで、わくわくするような可能性に満ちていた。その時の感激を思い出しながら、最後のお別れをしました。

 

榎本新吉さん、本当にありがとうございました。

ゆっくりとお休みになってください。

 

<2013/6/26>